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ケアンズから南に100kmほど行った山の中に、忽然と崩れかかった一見お化け屋敷のような廃墟となった城が現れる。この異次元の世界を思わせる城の話をしましょう。
この城は、王家でも豪族でもないスペイン人の実業家ホセ・パロネラという人が、子供の頃から自分の城を持ちたいという夢を叶えるためにオーストラリアにわたり、1935年この地につくり上げたもので、建築家でもないホセが自らの手で、美しい滝のあるメナ川のほとり、13エーカーの敷地に鉄筋コンクリートの城と美しい庭園を建設し、壮大な自分の夢の家を作り上げた。ディテールは稚拙だが、よくぞ素人がここまで創り上げたものだと驚かされる。いまは廃墟とはいえ、贅沢なつくりの大広間、大食堂、展望台等があり、実に手の込んだ施設であることが垣間見られる。庭園には愛の小道、愛のトンネル、秘密の庭、願いが叶う泉など、夢が満載している。しかし、1946年に大惨事が起こり、わずか10年で夢の城は洪水ですべてが破壊されてしまった。その後、修復を試みるが、度重なる洪水で再び完成することなく1976年に火災が起こり、メインの建物が消失。そして1986年にサイクロンが庭を破壊。廃墟としてしまった。この廃墟をそのままに保存し、2003年に州の重要文化財に指定され、庭などが一部修復され観光地として一躍脚光を浴び復活するも、今年(2006年)3月20日にこの地を襲ったサイクロンが無残にも庭園の木々をなぎ倒し、廃墟をさらに傷つけてしまった。 いつか自分の城を持ちたい、城に住みたい思う夢は、誰しもも同じである。実際にホセ・パロネラのように夢実現に強い意志で立ち向かう人は少なくはない。日本にも夢の天守閣や豪勢な邸宅を手に入れた「にわか大尽」はいる。しかし、それらと比べ、何ゆえに、築70年しかたっていない歴史的存在価値の希薄なホセ・パロネラの城が、注目されているのか、奇妙な話である。 200年の歴史しか持たない国では、heritageの考え方が違うこともあるが、ここのガイドが熱心に説明していることは “夢は生き続ける”である。少年ホセが抱いた夢がいまも生き続け、いつか叶うという言葉が多くの観光客を魅了しているのかも知れない。貧乏だったホセが努力しやっと得た資金で城を作ろうとしたが、彼女は既に別の男と結婚していた。そして彼女の妹と結婚することになるが、愛と夢に満ちたお城で次々と起きる出来事が、一層ロマンチックなドラマを増幅してきた。 車で道に迷いながらやっとたどり着いたパロネラの城。ボロボロに傷ついたスペイン洋式の廃墟を、愛の泉からじっと見ていると、蚊に刺されることも忘れ、いつしか妻と私は遠いい日を思い出すように若き恋人同士の気分になってきた。 (Wrote2006)
by tn-dragon
| 2008-03-10 10:48
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